15
「フミカ、おまえはどういう世界から来たんだ?」「何ですか、突然」
史香は顔を上げ、横目でリュークを見やった。いつものように公園でリュークにリンゴを食べさせて、自身はノートパソコンで顔写真のリストを眺めていた時のことだ。
「おまえ、俺の名前を知ってただろ」
「そうでしたっけ?」
そらとぼけてみせたが、リュークは構わずに続けた。
「最初はお仲間かと思ったが……ライトの正体も知ってる。ライトが埋めたノートの場所も知ってる。死神の目の取引の内容も知ってる――おまえ、どこから来たんだ?」
「……何だって今頃、そんなことを」
史香がリュークに憑かれてから、もう二ヶ月あまりが経過している。
初めて会話を交わした時の反応からしてリュークは史香にはさほど興味を抱いていないのだろうし、そうでなくても知りたいことがあったなら、この死神のことだ、遠慮などせずに即座に尋ねてくるだろう。今こうしているように、話をする機会はいくらでもあったのだから。
「俺も、黙って見ているつもりだったけどな。フミカは毎日そのリストを見てるばっかりで、ノートを使う気配もない……」
不満そうに漏らすリューク。史香はすぐに反論した。
「仕方ないじゃないですか。あのビル、至るところにカメラとマイクが仕掛けられているんですから。あんな怪しいノートを持ち込むだけでも危なかったのに、使いでもしたらすぐに竜崎さんの目にとまってしまいます」
それに、史香の目的は大量殺人でもない。
デスノートは、捜査本部にある史香の部屋の、机の引き出しの中にしまってあった。
竜崎と月がいる近くにノートを置いておくのは少々不安が残るが、現状では家探しをされるような事態には陥るまいと、史香は踏んでいる。持ち込んだ時は普通のノートや雑誌なんかに紛れさせたので、カメラには映っていないはずだ。
「なあ……おまえの目的は何だ?」
ひっそりと、死神が問う。ああ、つまり――こちらが本題なのか。
「私の目的は、」
そろそろ帰る時間だ。史香はノートパソコンの電源を落とし、閉じた。
「夜神月の邪魔をして邪魔をして、邪魔をしまくることですよ。あなたのデスノートを横取りしたようにね」
「…………」
正直に答えたつもりだが、リュークはちっとも釈然としなかったようだ。
「俺の楽しみは邪魔しないとか言ってなかった?」
「あら。楽しくありませんか」
「ま……それなりに、ってところだな。今のライトを見てるのも面白! だ」
リュークはクッと声を立てて笑い出した。
月の変わりぶり――ある意味では、彼もデスノートの被害者なのだろう。今の月が、きっとありのままの月だ。デスノートに関わりさえしなければ、夜神月は世間の常識に則った正義をふるって生きていけたはず。
それを、元凶の死神は他人事のように面白がって笑っている。何とも罪深いことだ。……同じくデスノートを手にした史香には、そんなことを言う資格はないかもしれないが。
公園から戻り、捜査本部のエントランスまで来た時、相沢とばったり出くわした。
「あ、相沢さん」
史香を見て、相沢は一瞬言葉を失ったようだった。その様子を怪訝に思い、首を傾げつつ尋ねてみる。
「今からお出かけですか?」
「……いや」
妙に歯切れが悪い――はっと、史香はその原因に思い当たった。そうか、夜神たちが警察を辞めるのは、今日だったか。
「あの」
言いかけて、けれど適切な言葉が思い浮かばずに口を噤む。いずれは戻って来ることになるとは言え、史香がそれを教えてやることはできないし、教えたところで気休めになるとも思えない。
「俺は、ここを辞めて警察に戻る」
「相沢さん――」
「もう会うこともないだろう。じゃあな」
早口でそう告げて、相沢は史香の横を通り過ぎ、行ってしまった。
……結局、何を言うこともできなかった。史香はその背を見送った後、階上へ向かった。
メインのフロアに着くと、珍しく模木の姿もあり、捜査員全員の顔触れが揃っていた。今しがた出て行った相沢だけがいない。
「今、相沢さんが……」
「相沢さんは、ここを辞めました」
史香が言いさすと、竜崎がそれを遮るように言った。弥海砂の部屋を映す巨大なモニターの前で、椅子の上の竜崎は膝を抱えており、こちらには背を向けている。
言葉少なな竜崎の代わりに、夜神や松田が、上層部からキラ事件の捜査を止めろと命じられ、夜神たちは警察を辞めて捜査を続けることを選んだという経緯を聞かせてくれた。
「史香は、どうします」
やはり振り返ることはせずに、竜崎は言う。
「えっ? 私……ですか?」
問の意図がわからず、聞き返した。
雑用係のような位置でしかも大して働いてもいないが、史香も一応はキラ事件の捜査員である。それを辞めるかどうか、と聞かれているのだろうか。
「私には、選択の余地がないと思うんですが」
「ありますよ。夜神さんたちが来るまで、史香は捜査には関わっていませんでした。先ほど、他の皆さんにはこのままキラを追い続けるかどうか改めて決めてもらいましたから、史香にも同じことを聞いているだけです」
「はあ……」
それにしたって、あの約束だってあるのだから、史香がそうそう捜査を降りはしないとわかっているだろうに。
……わかっているから?
だから、あえてその答えを聞きたいのだろうか。相沢は共に命を賭けてキラを追っていた仲間であり、今日の別離は、これまでそういうものを持たなかった竜崎に幾許かの感傷を与えたのかもしれない。
そう考えて竜崎の背中を眺めていると、ちょっと胸が苦しくなった。その背に飛びつきたいような、自分でもわけのわからない衝動に駆られたが、もちろんそんなことはせず代わりに答えを返す。
「当然、続けますよ。竜崎さんがここにいる限り」
言いながら、ふと、思う。この先、史香が元の世界に戻ることはあるのだろうか――この世界にやって来た時と同じように、予兆もなく、抗いようもなく。
竜崎はちらりと史香を一瞥して、また前を向いた。デスクの上にあった紅茶のカップを持ち上げ、口をつける。
「私がいなくなったら辞めるんですか」
「やけに絡みますね――そんな予定があるんですか? 竜崎さんがいなくなると、私は宿なし文なしです」
「それでは言い換えましょう。もし私がキラに殺されるようなことがあれば……」
「殺します」
つい口が滑った。
竜崎につられて、史香も妙に感傷的な気分になってしまっていたからだろうか。周りの月や刑事たち、死神までが、ぎょっとして史香を見ている。竜崎も、僅かに目を見張りつつようやくこちらに顔を向けた。
言ってしまったものは、もう仕方がなかった。今さら取り繕いようもない。こうなったら、全部ぶちまけてしまおう。
「もし、私が竜崎さんと離れ離れになるしかない状況に陥るなり、竜崎さんが私の側から離れていってしまうなりするなら、そうなる前に、私が竜崎さんを殺します」
完全に開き直って、史香は微笑みかけた。
「だから、そんなことさせないでくださいね」
「……まず、その仮定からしてありえませんけどね」
竜崎は再び背を向け、ずずっと紅茶をすする。
それまで固唾を呑んで見守っていた面々が、呆れたり安堵したり眉間を押さえたりのそれぞれの反応を示す中で、
「えっ結局ノロケ?」
松田の的を射た呟きが、ぽつんとフロアに響いた。
皆がヨツバについて探りを入れている間中、史香はただひたすらに事態を傍観するにとどめていた。
行ったことと言えば、模木のデータ収集をささやかながらに手伝ったり、あとは松田の劣等感をつついてあるべき流れを辿るように促したりしたくらいだ。
何しろ、決行の日まで一月を切っている。それは、竜崎の死まで――と言い換えることもできた。
史香には余裕がなかった。史香の考えた計画の下準備はとてつもなく膨大で気が遠くなるほど地道な作業を要したが、間もなくその日を迎えようと言うのに一向に終わりは見えて来ない。
そのため、アイバーとウエディが捜査に加わった時も、ヨツバビルに侵入した松田の事故死を偽装した時も(これには、史香やリュークがレムに見つかってはすべて台無しになってしまうという理由もあったのだが)、そしてヨツバのキラ会議を皆で覗いている今も、ひたすらフロアの隅で自分のノートパソコンと向き合っていた。
そういうわけで、松田に尋ねられた時も、
「史香ちゃんは竜崎の方じゃなくて、局長側でいいの?」
「はい?」
――何のことだか、さっぱりわからなかった。
松田が何か返そうと口を開いたのを、咄嗟に右の手のひらを彼に向け、押しとどめる。
「あ、ちょっと待ってください。せっかく覚えたのが、脳から零れてしまいます」
「……そう言えば、最近ずっとそのノートパソコンを開いてるよね」
史香の元までやって来ると、松田はディスプレイを覗き込んできた。見られて困るものではないので、止めずに好きなようにさせておく。それよりも、覚えたばかりの名前を脳に焼き付けておかねば。
「これ……ヨツバの社員リスト?」
「そうですよ。三十万人分……」
げんなりして頷いた。小休止とばかりに、パソコンの横に置いてあったあんみつの器を手に取る。
「史香さん、何か気になることが?」
そう問を投げかけてきたのは夜神である。史香はスプーンを口に運びつつ応じた。
「いえ、そうではなく、名前を覚えているんです」
「え、三十万人分も?」
松田が目を丸くしている。
「特定の条件で絞り込むので、そこまではないと思いますが……」
しかしヨツバ社員だけではなく犯罪者や金融に関わる人物のデータも別に集めているから、とにかく途方もない量であることに変わりはない。
「何でそんなことを……」
「――松田さん」
松田の言を遮る。
あまり深く突っ込まれるのは避けたいし、そろそろ続きに取りかかりたい。時間は有限なのだから、さっさと用件を済ませてもらおう。
「ところでさっき、何か言ってませんでした?」
「あ、うん。史香ちゃんは、こっち側につくってことでいいの?」
こっち側?
「ええと……何の話ですか」
「七人逮捕には反対だって、竜崎は月くんと一緒に向こうに行っちゃったけど。ほら」
松田の指し示す先にあるのは、フロアの巨大モニターだ。すでにヨツバの会議室ではなく、弥海砂の部屋のカメラ映像に切り替えられている。モニターに映し出された部屋の中には、彼女の他に竜崎と夜神月が――
「!!」
史香は雷に打たれたようになった。
この上なく重大な見落としをしてしまっていたことに、今になって気が付いたのだ。それを防ぐのはもはや完全に手遅れであり、モニターの向こうの竜崎は、まんまと弥海砂を言いくるめて籠絡する。
「ミサさんは、月くんにふさわしい最高の女性です」
「ありがと、竜崎」
弥海砂が、チュッと軽く音を立てて竜崎の頬にキスをした。
「…………」
あんみつを食べる。
不思議なことに、スプーンを差し入れるたび、寒天が原型をとどめないぐちゃぐちゃの無惨な姿になっていく。スプーンの先が器の底とぶつかってガチガチと耳障りな音が鳴った。
頭上から聞こえてくる、リュークの笑い声。それがさらに不快感を煽ったが、他の捜査員がいるこの場では咎めることもできない。
「ふ、史香ちゃん」
「はい、何ですか? 松田さん」
おそるおそるといったふうに声をかけてくる松田に、史香はにっこり笑顔を返す。
「いや、だから、怖いよ……」
「そうですか。私、急用を思い出しましたので、ちょっと失礼します」
「う、うん、行ってらっしゃい……」
空の器を置いて立ち上がり、史香はフロアを出て行った。
「いいんですかね、局長? 行かせても……血を見るんじゃ」
「う、うむ……」
「…………」
残された元刑事たちは、怯んだようにその場に立ち尽くしているよりほかなかった。
竜崎に舌先三寸でうまく丸め込まれて、月は結局ミサを含めた三人で捜査をすることになってしまった。
「色仕掛けなんてするわけないでしょ! もーっ、何考えてるの?」
「文句が多いですねミサさんは」
などと今後の方針について話している――と言うよりも、二人が言い合っている最中に、廊下から高らかな足音が聞こえた。そちらを見やる。ドアから入って来たのは、
「史香? 何かあったのか」
珍しいな、と月は思った。記憶にある限りでは、彼女がミサの部屋に足を踏み入れたことはない。
尋ねる月には応じず、史香は部屋に入ってまっすぐに月の正面までやって来た。やけににこにこしている。
……嫌な予感がした。史香がこういうふうに笑っている時は、ろくなことを言い出さない。月の予感に違わず、史香は満面に笑みをたたえたまま、こう言った。
「月さん。ちゅーしてあげます」
「はぁ?」
思わず、すっとんきょうな声が口をついて出た。また、いつもの質の悪い冗談か。
「何を急に……いらないよ」
「いるとかいらないとか、そういうことではありません。私は、やられたらやり返す主義なんです!」
「お、おい、史香」
両肩をがしっと掴まれ、月はよろめいた。史香が背伸びをして顔を近付けてくるので、慌てて押し返す。肩に伝わる力の強さから、どうも史香は本気で事に及ぼうとしているらしいとわかった。怖ろしいことに。
血相を変えたミサが、月たちの間に割って入ろうとする。
「ミサのライトに何するの!? 離れてよ!」
「……あなた、どの口がそれを言いますか」
にこにこ顔の史香は、月の両肩に手を置いたまま、底冷えするような声音でミサに告げた。
ああ、なるほど――史香の奇矯な行動の理由が、やっと見えて来た。さっきのアレか。要因の片割れである竜崎は、指をくわえて事のなりゆきを静観している。
「……竜崎」
何とかしてくれという意を込めて、目を向ける。すると竜崎はあからさまに迷惑そうな顔をしてみせた。迷惑がかかっているのはこっちだと言うのに――睨めつければ、竜崎はようやく口を差し挟んでくる。
「史香。何を怒っているのかは大体わかりましたが、少し落ち着いてください」
「私はちっとも怒ってなんかいませんし、至って冷静です。どうやったらこのアーパー女を合法的に八つ裂きにできるか考えてはいますけれどね」
「アーパー女!? ……ってなに? ライト」
「…………」
騒ぎは少しも沈静化する気配がない。月は頭痛すら覚え始めた。
「さっ、月さん。そろそろ観念してください。ちゅー」
「イヤーッ! やめてー!!」
痺れを切らした史香がグイグイと月の頭を引き寄せようとし、それをミサが後ろから引き戻そうとするものだから、月はさながら大岡裁きのような状態になる。女性の腕力とは言え、二人がかりで手加減なしとなると、それなりに苦しい。
「おい、竜崎、見てないで――」
「仕方ないですね」
これ見よがしに溜息をついた後で、竜崎は史香を月から離しにかかった。史香は抵抗したが、力では当然竜崎に分があり、いとも簡単に引き剥がされる。「やるぅー」とミサが歓声を上げた。
史香はやっと嘘臭い笑顔を止め、怒り心頭という体で竜崎に食ってかかる。
「何するんですか、竜崎さんっ、邪魔しないでください!」
「史香、ちょっとこっちに」
有無を言わさずに史香の手を引いて、竜崎はミサのいる方、月の背後へと回った。
それを目で追おうとしたところ、「月くんはそのまま動かないでください」と釘を刺される。振り向くな、ということなのだろう。その口調には、ほんの僅かながらに苛立ちのようなものが滲んでいる気がする。
史香の方に気を取られていて今まで少しも気付かなかったが――まさかさっきからの竜崎の嫌味な態度は、月への当てつけだったのだろうか? 発端はミサだと言うのに、何故史香と竜崎、二人ともの矛先は月に向いているのだろう。
理不尽さを感じながらも、とりあえず従う――と。
「もう何なんです、竜ざ」
引っ張られて不平を漏らす史香の言葉尻が、不自然に途切れた。
静寂。
時間にしてみれば、ほんの数秒のことだったかもしれない。
「もういいですよ、月くん」
「え、ああ……」
振り向くと、そこには何ら変わりのない表情の竜崎と、ぽかんとしている史香がいる。
「それで、月くん。ミサさんについてですが――ああ、史香は私たちのチームに加わるということで、構いませんね?」
後半の言葉は、いまだ呆然としている史香に向けてのものだ。先ほど月が感じ取った刺々しさは微塵もなく、どこかすっきりした様子の竜崎。史香の方は、あれだけ騒いでいたのに、打って変わって不気味なほどに大人しい。
「史香?」
竜崎が顔を覗き込むと、史香は弾かれたように後ずさった。手で口元を覆う。
「……わ」
「わ?」
「私、きゅ、急用を思い出しましたので、ちょっと失礼します」
「はい、どうぞ、行ってらっしゃい」
史香は俯いて口を押さえたまま、ほとんど逃げるみたいにして部屋を出て行き、竜崎は素直にそれを見送った。
史香を黙らせた手段を、月は何となく悟った。すれ違いざまに窺った彼女の顔が真っ赤になっていたように見えたのは、思い違いではないのだろう。
この部屋には何台ものカメラが設置されてある。要は、月はついたて代わりに使われたのだ。……自分の身にも覚えがあるようなないような気がするが、こういう女性の気持ちを踏みにじるような行為を月は決して好かないから、気のせいに違いない。
「竜崎さん、大胆なのね。ねえライトー、ミサもー」
ミサがちょっとはしゃいだ様子で、月の腕を揺する。そのままされるのに任せて、月は溜息をついた。
「……竜崎。僕を巻き込まないでくれないか」
痴話喧嘩に。
「それは史香に言ってください」
竜崎は素知らぬ顔で、あくまでしれっとして応じた。
廊下を進み、竜崎たちの目の届かない、そしてフロアのモニターにも映らない辺りにまで来ると、史香は足を止めた。へたり込みそうになるのを、壁に手をついて堪える。
「なにいまのなにいまのなにいまの……」
壊れたレコードのように呟いた。何とか正常な思考を組み立てようとするが、頭の中がぐるぐるして何もまとまらない。
「どこかで見たことのあるパターンだな、これ」
後ろから悠然とついて来た死神が、能天気に言う。そうだった、この死神に憑かれている限り、一人になることなど叶わないのだった。
「あの二人、変なところで似てるよなあ」
「……リューク」
リュークをじろりと見上げる。どこにあるとも知れないマイクを気にして、一応は小声だ。……よし、その程度のことに気を回せるくらいには、落ち着いてきてはいる。
「あなたは今、何も見ませんでしたね?」
「えっ。いや、ばっちり見……」
「見ませんでしたね」
「見……」
「見ませんでした」
「……なかった……かも」
「よろしい」
とりあえず死神を黙らせたはいいが――
落ち着いてきたら落ち着いてきたで、さっきの出来事が頭の中にありありと蘇ってくる。どうしようもなく身悶えするしかなくなり、顔を覆う。再び弥海砂の部屋に戻ることはできそうになかった。
かと言って――ああ、パソコンを向こうに置きっ放しなのだから、どうするにせよフロアまで取りに行かなくては。けれども、あの場の彼らはモニター越しに今の騒動を見聞きしていただろうし……居たたまれない気持ちになるのは間違いない。
どうにも進退窮まり、史香はひとり頭を抱えるのだった。