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珍しく、父が夕飯時に帰宅した。父を労う母の声が階下から届く。月だけではなく、隣でノートから切り取ったページにせっせと名前を書き続けていた樹里も、聞きつけて顔を上げた。
「お父さん、今日は早いね」
「そうだな」
月の相槌に「ご飯よー」と呼びかけてきた母の声が被さる。
「樹里、ここは僕が片付けておくから」
「いいの? ありがとう、お兄ちゃん」
刑事局長である父は多忙で、特に最近は、職場に泊まるか日付が変わってからの帰宅かのどちらかだった。久しぶりに父と顔を合わせるのが嬉しいのだろう、そわそわしている妹に先に行くよう促すと、妹は笑顔を弾ませて立ち上がった。
「慌てて、階段から落ちるなよ」
「やだな、落ちないよお」
浮かれ調子の樹里の後を、リュークがついていく。
「ジュリとライトの父親か。俺は初めて会うな」
「そういえば、そうかも。お父さんにはリュークが見えないけどね」
「父さんたちがリュークの顔を見たら、それだけで心臓麻痺で死にそうだな」
冗談を言うと、樹里とリュークは二人して顔を見合わせた。
何だ?……疑問を持った月がそれを音にする間もなく、「その言い草、やっぱり兄妹だよなあ」「そんなの当たり前じゃん、リューク」死神と妹は部屋を出ていく。
月はデスノートを厳重にしまってからリビングへ下り、父におかえりを言って、それから家族四人で食卓を囲んだ。
「ライト、勉強の方はどうだ? センター試験までもうすぐだろう」
「まあ、いつもどおりだよ。クラスは忙しないけどね」
「そうそう、いつもどおりの学年トップでーす」
「樹里はどうなんだ?」
「えっ、あたし? あ、あたしも、いつもどおりかなー、なんて」
「樹里ったら、今日もライトに勉強を見てもらってたでしょう」
「何だ、そうなのか? ライトに頼ってばかりではいかんぞ、樹里」
「お母さん、バラしちゃ駄目じゃん!」
しばらくは和やかな家族の会話が続いたが、父はそのうちにあまり喋らなくなった。食事も、皿のいくつかには手をつけないまま箸を置いている。
「……疲れてるみたいだね。父さん」
「ああ、今回の事件は難しくてな。一番お偉い人が、今になって死亡推定時刻から犯人は学生じゃないかと言い出して」
父がそう言いさすと、母がハッとして樹里を見た。
「お父さん、食事中にそんな話……」
「あ、ああ、母さん、そうだったな。すまんな、樹里」
「――ううん、あたしは気にしないよ」
樹里はそう言ったものの、その後は口数少なく食事を済ませ、早々に席を立ってしまう。父はばつが悪そうな、母は不安に満ちた表情で、それぞれ樹里が去った後の閉じられたドアを見つめていた。
「僕が後で様子を見ておくよ。樹里の宿題も途中だしね」
「そう……? ライトがそうしてくれるなら、安心だけど」
昔から、樹里は怖がりだった。特に犯罪絡みのことに対して。
樹里がああなると、両親は途端に腫れ物に触るような態度になる。樹里がもっと幼かった時分には、パニックを起こすこともしょっちゅうだったからだ。
妹の恐怖の源がどこにあるのか、月にはよくわからない。わからなくても、妹を守るのは兄の務めだと思う。
樹里の部屋を訪ねると、樹里はベッドに入って枕にしがみついていた。いつもなら笑顔で月を出迎えるのに、背を向けてこちらを見もしない。
代わりに、部屋の真ん中に立ち尽くしていたリュークが振り返った。
「あ、ライト。さっきから、ジュリがこんな調子なんだが……」
それには応じず、月はベッドに腰かけた。先月の末の晩を思い出す。あのときとは、状況が正反対だ。
「樹里。父さんがしてたのは、キラ事件の話だよ」
「えっ?」
樹里は身体を起こし、ようやく月を見た。しばらくぽかんとした後で気が抜けたように倒れて、今度は仰向けに寝そべる。
「あ……そっか、そっかあ」
「少し考えればわかるだろ。今、警察が頭を悩ませている事件が何かなんてさ」
「うん、そうだよね。……ふふっ」
「どうした?」
問うと、樹里は笑い声をこぼしながら月を見上げた。
「何だかおかしいなって。刑事局長と『凶悪犯罪者』のキラが、実は家族で、一緒に住んでて、さっきまでごはん食べてたんだなって思ったら」
もちろん、世間がどう言おうとあたしたちは犯罪者なんかじゃないけどね。
最後にそう付け足して、笑う樹里。
「結局、何だったんだ?」
「何でもないよ。ごめんね、リューク」
「謝られてもな……しかし警察には、日本の関東だけじゃなく、学生とまで調べがついてるのか」
面白がる口調で、リュークが言った。そこに危機感がかけらも見当たらないのは、普段から憚りなく口にしているように、リュークはキラの味方ではないからだろう。退屈を凌ぐためというくだらない理由で、リュークは月たちを利用している。
――それなら、僕だって利用してやるさ。
全世界同時特別生中継と銘打たれたリンド・L・テイラーの演説は、実のところ日本国内でのみ行われていた。
それも日本の各地区で時間をずらして、である。これは放送のあった翌日に月がインターネットで集めた情報を総合して結論づけたものであり、テレビや新聞では報道されていない情報だ。もっとも、月には放送の直後から見当がついてはいたが。
さらに、父のパソコンに侵入して判明したことだが、探偵「L」が全世界の警察を動かせるというのは事実だった。
つまりLの狙いはICPOを使ってキラを煽り、キラのリアクションを引き出すこと。それによりキラが日本のどこにいるかを割り出すことだったのだ。
リアクションとは、キラによる殺しを意味する。「リンド・L・テイラー」はあの男の本名ではあるが、あの男は「L」ではない。でなければ、囮の意味がない。
「どうりで、安い挑発だったわけだよ」
「いや、おまえ全力で乗ってただろ……」
リュークの言を、月は黙殺した。
「とは言え、奴の企てが失敗に終わったのは、樹里のおかげだ」
「ううん。お兄ちゃんなら、あたしが止めなくたって、ちゃんと思い直してくれたに決まってるよ。でも、そんなふうに思ってくれてるんだったら、嬉しいな」
いじらしいことを言ってくれる樹里の頭を撫でながら、月は思案する。
……あの放送から浮かび上がる事実はふたつある。
ひとつめは、キラの殺しの手段に顔と名前が必要だと知られているということ。
Lは、もしキラが挑発に乗り殺しを行うなら、自分自身ではなく「リンド・L・テイラー」が死ぬとわかっていた。だからこその罠だ。Lと「リンド・L・テイラー」の違いは、顔と名前が明らかにされているかどうか……
まあ、これは仕方ないだろう。報道されていない、顔も名前もわからない犯罪者は、新世界の神たる月たちにだって裁きようがない。
ふたつめは、Lはキラが関東在住であるとほぼ確信していること。
一回目の放送は、関東地区で行われた。地方ごとに放送したとして、最初と最後で何時間のずれが出る? 電子掲示板を使用不能にしたくらい――試してはいないが、電話やメールも一時的に不通だったのではないか――で、すべてが隠蔽できるとは思えない。あの放送が有効な罠たりえるのは一回目のみだ。
これに関しても、原因は推測がつく。月たちが裁いた人間の中に、関東圏でしか情報を得られない犯罪者がいたのだ。おそらくは、最初の――樹里が裁いた新宿立てこもり事件の犯人が、そうだったのではないか。
そのことを、月は樹里に告げるつもりはなかった。言えば、樹里はきっと気に病む。負い目を感じてほしいわけではない。これから、月が気を付けていけばいいのだから。
「調べだって? わからないかな、リューク。僕はわざとそうしたんだよ。警察が、そこまでは辿り着けるように」
「ライト、そりゃ、どういうことだ?」
「いいか? 死の時間なんてデスノートなら簡単に操れる。ここで、例えば僕らが一時間おきに犯罪者が死亡するようにノートに書く。Lはどう思う? 『キラは学生だ』と発言した次の日から、その根拠が崩れるんだ」
「うーん……」
「……当てつけだと思う、かな? 自分の発言がキラにまで漏れてる、とか」
首を捻ったリュークに代わって、そう答えたのは樹里だ。樹里は学校のテストこそ平均点止まりだが、頭は決して悪くない。さすが、僕の妹だ。
「そのとおりだ、樹里。そしたらどうなる? Lは警察関係者を疑う。一方で警察は、顔写真と名前の載った警察手帳を身につけて、いつキラに殺されるともわからない危険な状況で捜査している。Lは顔も名前も明らかにしていないのに――こうなると、警察とLが衝突するのは必至だろうね」
「なるほど、よく考えたもんだ」
「このくらい、わけないよ。捜査状況を攪乱できて、ついでに警察がLの正体まで突き止めてくれたら、言うことはないな。キラにいつでも殺されうるという立場では、Lは下手に動けなくなる」
そして僕も、いざというとき、Lを始末できる――
月は続く言葉を呑み込んだ。
樹里は怖がりだ。そしてとても純粋で……だから正義を執り行うには、悪を裁くには、時に犠牲を伴うものだと考えられない。もちろん、月は妹のそんな性分を好ましく思う。けれど、それとこれとは話が別だ。樹里にできないなら、僕が泥をかぶる。理想の新世界を実現させるには、そのくらいの覚悟は必要だろう。
「想定内ではあるけど、僕らの周囲にまで捜査の手が伸びるかもしれない。外でリュークと話すときは慎重を期するように。家の中では僕がよしと言うまではリュークと話さないこと、もちろん犯罪者裁きについてもだ」
「うん、わかった」
「――とにかく、仕掛けられたなら、こちらからも仕掛けるべきだ」
そう、やられっぱなしは性に合わない。
樹里はもう起き上がり、きらきらした瞳で月を見つめていた。月への愛情と信頼と尊敬に満ちあふれているまなざし。月にとって心地よいもの。あって当たり前のもの。永遠に失われないもの。
「手伝ってくれるね? 樹里」
「うん、お兄ちゃん。もちろんだよ」
そのためには、警察とLを出し抜くと同時に、樹里までをも欺かなければならない。言葉の綾とは言え、最愛の妹に対して不適当な表現だけれど――
間もなく二学期も終わり冬休みになろうかという頃になると、高校全体がうわついた雰囲気になってくる。受験直前であっても、周りのクラスメートたちはクリスマスや大晦日、正月の予定を決めるので盛り上がっていた。
「ねえ、ライト、クリスマスって空いてる?」
放課後、月はクラスの女子に声をかけられた。
「よかったら――」
「悪いけど、クリスマスは毎年、家族と過ごすようにしてるんだ」
「あっ、じゃあ、その次の土曜日とか」
「ごめん、その日は妹と約束してるから」
穏やかではあってもきっぱりした断り文句に、女子生徒はすごすごと引き下がった。その一部始終を見ていた友人たちがぐちぐちと言い交している。
「何であんなシスコン野郎がモテるんだよおぉ」
「顔か? 顔なのか?」
まったく、男の僻みというやつは醜い。そして僕はシスコンじゃない。隠す気もないのであろう密談に耳を傾けながら、月は胸中はどうあれ涼しい顔で帰り支度を続けた。
「てか休日に妹と出かけるってのが、俺にはまず理解できないんだけど」
「妹によるな。『お兄ちゃん』ってかわいーく呼んでくれるような妹なら、俺はアリだ」
「声作るなよ、きめえな。まあ確かに、樹里ちゃんはかわいいけどな」
そうだろう、そうだろうとも。僕の妹なのだから、当然だ。
「だよな!? 俺は樹里ちゃんとならデートできる! ていうかしたい!」
「おまえやべーよ。ロリコンかよ。樹里ちゃん中学生だぞ」
「だってうちの妹なんかさあ、この前……」
……こいつは二度と家には上げないようにしよう。
「それでね、そのときリュークがその子の後ろで……もう、笑わないようにするのが大変だったんだから」
いつものように樹里と落ち合い、家路を辿る。
月の気苦労を知る由もない樹里は、取るに足りない話をして楽しそうに笑っている。あの友人たちではないが、確かに樹里はかわいい。笑うとなおさらだ。中学で、変な虫がついちゃいないだろうな……今度それとなくリュークに聞いてみるか……
「樹里。クリスマスには、何が欲しい?」
「そんなのいいよ、気にしなくて。お兄ちゃんバイトしてないし、リュークの餌代だって大変じゃん」
「おい、ジュリ、餌って言うなよ」
「それに、今度スペースランドに連れてってくれるんでしょ? あたしは、それで十分だよ」
月は足を止めて右手で眉間を押さえ、樹里の言葉によって感じたいろいろなものが、心の中に染み渡るようにじっくりと噛み締めた。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「いや、何でもないよ、樹里」
「ジュリもそうだが、おまえも大概だよな、ライト」
「…………」
リュークに返事をしなかったのはここが人通りのある道端だからであって、他の理由があるわけではない。決して。
そうして家路も半ばを過ぎたところで、
「……なあ、ジュリ、ライト。ちょっといいか」
突然にリュークがこう言い出した。樹里は、どうするべきか決めあぐねてかちらりと月を見上げる。その視線を受け、月は仕方なしに返事をした。
「外では話しかけるなって言ったろ」
「今、聞いておいた方がいいと思うけどな……」
物言いに、何やら不穏な気配を感じないでもない。月は無言でリュークを促した。
「俺は、二人の味方でもなんでもない」
「……そんなこと、今さら言われなくてもわかってるよ」
「ほーんと薄情だよねー、リュークは」
樹里が小声でうんうんと頷いている。
「もっとも俺はおまえたちのことは嫌いじゃないし、十分に楽しませてもらってる。ある意味、最高の奴らにノートを拾われたと思ってはいる……ちょっとキモイけど」
「何なんだ。褒めるか貶すか、どちらかにしてくれ」
「俺はおまえたちの結末に興味がある。だからこそ、口出しも手出しもしない。今から言うことはキラの味方だからなんていう理由じゃなく、俺自身が気持ち悪いからだ」
「わかったから、早く言えよ。簡潔にな」
「――ずっと二人を尾けている人間がいる」
咄嗟に、月は樹里の肘を掴んだ。強張っている身体を強引に引っ張って、前へ進む。
「樹里。足を止めるな。歩け」
「……尾け、尾けてるって。あ、あたしを? なんで? だれが? どうして?」
「僕がいる。だから樹里、大丈夫だ」
よほど衝撃的だったらしい、かわいそうに、樹里は顔色を蒼白にして、しきりに意味のない言葉を呟いている。パニック寸前の樹里を宥めながら、何とか家まで帰り着いた。
「目障りなんだよ。あいつに俺は見えていないが、俺はいつも見られている気分だ」
「そうだな、樹里のためにも、早く何とかしてやるよ。まったく、いくら僕の妹がかわいいからって、不届きな変質者だ」
自室に戻ってからそう言ってやると、リュークはたっぷり十秒は黙り込んだ。
「……いや、普通に考えて、キラ関係なんじゃないか? 関東在住の学生で、警察関係者っていうところまで割れてるんだろ」
「もちろん僕もそう思っていたさリューク」
「お、おう」
「……キラ関係?」
リュークとの会話に、樹里が反応を示した。ずっと月のベッドの上で萎れてうなだれていたのだが、ようやく顔を上げてくれた。少しだけ目が赤い。
「お兄ちゃんの作戦に、Lが乗ってきたってこと?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。名前がわかれば、何とでも始末のつけようがあるんだが」
椅子にかけたまま頭の後ろで腕を組み、深い思案に沈み始める月。
そこで、リュークが淀みなく語り始めた。
死神と、デスノートを持った人間との違いについて。死神はデスノートで人間を殺し、その人間の本来の寿命をもらって、自らの寿命を延ばす。人間がデスノートを使っても寿命は延びない。
もうひとつ、目が違う。死神は人間の顔を見ると、その名前と寿命が顔の上に見える。だから死神は死神界から人間界を覗くだけで不自由なく人間を殺せるし、自分の寿命がどれだけ延びるのかわかる。人間と死神との、決定的な違い。
ただし――
「死神は自分の落としたノートを拾った人間とだけ取引をし、そいつの目を死神の目にしてやることができる」
「拾った人間ってことは、あたし?」
ベッドから身を乗り出して、樹里が問う。リュークの興味深い話を聞いているうちに、先ほどのショックは随分と薄らいだようだ。もう、いつもの樹里に戻りつつある。
「ひと目で名前がわかったら便利じゃん! 取引って何するの?」
「死神の目玉の値段は……」
リュークはもったいをつけて言った。笑みの形に裂けた口が、さらに裂け上がって禍々しい笑い顔となる。
「その人間の、残りの寿命半分だ」
「論外だ」
月は即座に切って捨てた。
リュークは期待が外れた様子で、わかりやすく肩を落とした。
「……早いな。少しは考えないのか」
「リュークがもったいぶりすぎなんだよ」
「寿命の半分かあ……ちょっと高い買い物だよね。さっきの人が警察だったら結局は殺さないんだから、名前を調べるためだけに寿命を削るっていうの、割に合わないもん」
殺さない、と樹里ははっきりそう言った。
リュークのやつ……月は内心で溜息をつく。樹里にこんな話をしたら、あいつを殺すのが難しくなるじゃないか。
警察がこうも早い段階で身内を疑うとは考えにくかった。尾行者がLの手の者だということは明白だ。仕掛けてから、まだ一週間も経っていないというのに……
月たちがキラだと怪しまれる可能性はまずないが、これが何ヶ月も続くとなれば、どうなるかはわからない。邪魔者は消すべきだ。一刻も早く。それも、樹里に知られないかたちで。
「そうだ、その人の犯罪歴がわかる目はもらえないのかな? そしたら、報道されない犯罪者も裁けるし」
「そんな都合のいいものあるわけないだろ……」
「えーっ、役に立たないなー」
「……おまえ、けっこう口が悪いよな。さすがの俺も、ちょっと傷付くぞ」
「あはは、冗談冗談。ほんとはそんなこと思ってないよ、リューク」
月は椅子に背を預け、目まぐるしく思考を巡らしながら、リュークに笑いかけている樹里を眺めやった。樹里を安心させるにはしかし、なるべく目に見える形で退場してもらうのがいいというのも、また事実だった。
……仕方ないな。
「――樹里。目の取引は、何があってもなしだ」
「お兄ちゃん?」
月は立ち上がり、樹里のいるベッドの上に膝をつくと、不思議そうにこちらを見上げてくる樹里の両肩に手を置いた。そうして、正面から樹里を見つめる。
「新世界を築いても、そこに樹里がいないんじゃ意味がないよ。優しい人しかいない理想の世界で、一緒に長く生きよう」
「お兄ちゃん……うん、うん。あたしも、同じ気持ちだよ」
感極まって瞳を潤ませる樹里が、そっと月の肩に頭を寄せたのを、優しく抱きしめてやる。
月の背後で、死神がぼそりと独りごちた。
「やっぱり、この兄妹って……キモッ」